レスキュー日誌

9月末にレスキューのお話しをいただきました。
10月末がタイムリミットというこの案件に限らず、レスキューはいつも時間との闘いになることが多いです。
あらかじめ写真を送っていただき、作戦を練ります。
活字鋳造機が4台の他、母型、活字や大量の備品類です。
引受先が見つからなければスクラップとして廃棄することになってしまいます。
大急ぎで引き受けの候補先とお話しを進めながら、搬出の下見と下準備を行いに現地に伺いました。

今回は横浜、岐阜、大阪、廃棄と4つの仕向地がありますので、混同しないよう仕向地の表記ラベルも貼っていきます。
長距離輸送になるので機械にラップ掛けをしておきます。
万が一、輸送時の振動で部品が脱落した場合でも紛失を防ぐことができます。
また、搬出日が雨天であっても安心です。

母型箱には鍵が掛かっていたのですが、肝心の鍵がありませんでした。
昔の箪笥に付いていた鍵穴に良く似ていたので、下見から帰ってから目星を付けた3種類の鍵を購入しました。
下の写真は搬出日のもの。無事に開錠できました。

小池製作所の邦文モノタイプが付属品一式とともに。
どの機械も保管状態が大変素晴らしく、錆やホコリがほとんどありません。

こちらは池貝鉄工所の邦文モノタイプ。

植字台は破損を警戒して分解しました。
仕向地ごとの物量が確定し、周辺の道路状況も把握できました。
乗用車に備品類や活字などを載せられるだけ載せて下見は終了です。

下見から1週間後。
いよいよ明日は搬出の日です。
場所が関東なので前日に出発します。
岐阜への納品と大阪への持ち帰りのためユニック車で行きます。
重量物運搬は本業ではありませんが、小型移動式クレーンと玉掛け資格を持っているのです。

前泊して現地入り。
宿を出発する頃には予報通り雨が降り始めてきました。
ラップ巻きしているので少々の雨は構いませんが、作業は気を遣います。

搬出は打合せ通り順調に進みます。

周辺の道路が狭いため4トン車が入れず、仕向地が複数という事もあって2トン車でのべ4台の作業になりました。
横浜向けの荷を積んだトラックが出発したあと、私のトラックに岐阜行きと大阪行きの荷を積んでお昼休憩。
積み込みを手伝ってくださった協力会社の職人さんたちと一緒に昼食に出ました。

午後は活字の搬出からスタートで、人海戦術で積み込みましたが食後の良い運動になりました(笑)。
その後、横浜から戻ったトラックに廃棄品を積み込んで全ての作業が完了しました。

作業終了は17時前でした。
お昼前から本格的に降り出した雨で下着までずぶ濡れですが、これから岐阜に向かわなければなりません。
高速道路のパーキングで着替えることにして出発です。
途中、渋滞があったりして岐阜の宿に到着したのが23時前。
ぐっすり眠って翌朝。
朝日に輝くユニック車かっこ良いです。
朝イチに植字台を納品して大阪に帰るスケジュールです。

お昼前に帰阪。もろもろ降ろして今回のプロジェクトは無事終了です。
全量廃棄の場合に比べて段取りを組むのが大変でしたが、ここが弊社の腕の見せどころ。
搬出の計画から実施まですべてお任せいただいたお蔭で現場は混乱することなく1日で作業を終えました。
4台もの活字鋳造機を1台もスクラップにすることなくレスキューできて良かったです。

アメリカ製の活字鋳造機、母型、パターン、木活字と金属活字の一部を持ち帰りました。
大阪の引き受け人の方に無事お引き渡しして、残りは弊社で保管します。
アメリカ製の活字鋳造機はThompson Type Machine Company社が1920年代に製造したものです。
一部紛失している部品もありますが、まったく錆がなく保存状態が素晴らしく良い鋳造機。
アメリカで同じモデルを使用している鋳造家に報告すると、部品の供給や操作指導を含めて応援すると言ってもらえましたので、いつの日か復活させたいと思っています。

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